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レコード再発見プロジェクト 第2弾イベント @東洋化成 末広工場

 テクニクス、ナガオカ、東洋化成の3社が、日本の音楽ファンにレコードの魅力を伝えるために発足したプロジェクト、「レコード再発見プロジェクト」。4月21日には、鈴木慶一、和田博巳、アリス=紗良・オット、ピーター・バラカン、藤本国彦といったゲストを迎えて発足イベントが行われたが、8月31日に第2弾のイベントが東洋化成の末広工場で開催された。

 

 

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 イベントの冒頭では3社の代表者が登壇。まず最初にマイクを向けられたのは、9月9日にダレクト・ドライブ・ターンテーブル・システム「SL-1200G」を発売するテクニクスの担当者、志波正之(ホームエンターテインメント開発センター)だ。志波は「SL-1200G」の魅力について、「外見は旧モデルと同じだが、中身はハイファイオーディオ用にブラッシュアップされたもの。その目覚ましい進化を確かめてほしい」と自信のほどを語った。さらに「SL-1200GAE」が30分で予約完売したという報告もあり、音楽ファンの期待も伝わってくる。

 

 

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 続いて、「SL-1200G」に使用されるカートリッジ、「MP-500」を制作しているナガオカの担当者、寺村博(技術アドバイザー)が、「MP-500」の特性について「レコードの溝からできる限りの情報を引き出すことができる最高機種」と説明。寺村はレコード針一筋の開発マンだが、現在、活況を呈しているアナログ市況について「音質を追求するなら、やはりアナログ」とコメントし、司会者にアナログ初心者にお薦めのモデルを訊かれると「まず自分の好きな音質を考えたうえでカートリッジを選んで欲しい」とアドバイスした。

 

 

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 そして、東洋化成の担当者、石丸仁(レコード事業部 部長)は、会場になった末広工場の方針について「日夜、品質管理を徹底して、JIS規格を厳しく遵守している」と説明。司会者から「一人前のカッティングマンになるためには3年かかるそうですね」と話を振られると「すべての過程において職人気質が必要とされます」と返した。また、全製品を日本で制作しているナガオカの寺村も「最後には熟練された人間の手が必要」と語り、〈メイド・イン・ジャパン〉のクオリティの高さが「レコード再発見プロジェクト」の要であることを再確認させられた。

 

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 また、東洋化成からはもう一人、ディスク営業課の小林美憲が登壇。レコードを盛り上げるためのイベント、「レコードの日」が11月3日に開催されることが告知された。現在のところ、日本のヒップホップ史に残る名曲、LAMP EYE「証言」がシングルでリリースされることが決定したほか、今後ラインナップが発表されていく予定で、音楽ファンとしてはこちらも気になるところだろう。

 

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 続いて3人と入れ替わるかたちで、ゲストの土岐麻子が登壇。最新作『Bittersweet』をアナログでリリースした彼女は、「子供の頃から音楽を聴く時はアレコードだったので、自分もレコードを出すことができて嬉しい」とレコードへの愛着を語った。そして、『Bittersweet』のレコードのみにボーナストラックをつけるというユニークなアイデアについては、「レコードのモノとしての魅力を知って欲しかったので、手に取ってもらうためにボートラを付けました」と説明。そして、このイベントのために『Bittersweet』からカットされた7インチ・シングル「Beautiful ay/ラブソング」にみずから針を落としてイベント参加者と一緒に聴いた。「古いサウンドを意識した」という曲だけにレコードの音質との相性も良く、土岐も満足そうに笑顔を浮かべる。彼女は最近のレコード・ブームについて「音楽の聴き方のひとつの提案であり、未来を感じさせます」と感想を語ったが、音楽ファンにとってもミュージシャンにとってもレコードは音楽文化を豊かにするものだと改めて感じさせられた。

 

 

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 そして、土岐のトークの後は、土岐も加わってイベント参加者による工場見学。日本で唯一のレコード工場を見学できるということで参加者も興味津々だ。まず、最初に向かったのはカッティング・ルーム。ここではマスターになる音源を、レコードの原型になるラッカー盤の溝に刻み込む作業が行われる。音源によってはレコードに記録できない音域が含まれていたり、レコードに記録した場合にノイズが乗りやすい音があったりと、そうした様々なことに気を配りながらカッティングしていくという担当者の話に「一人前のカッティングマンになるには3年」という言葉を思い出す。参加者達は耳を澄ませて、カッティングマシンに刻まれた音とマスターの音を聴き比べていた。

 

 

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 カッティング・ルームに続いて一同が向かったのはプレス・ルーム。ここではプレス機によって、レコードに溝を刻み、レコード中央にラベルを貼付ける。塩化ビニールの黒い塊が100トンの圧力でプレスされ、レコードがプレス機から生み出されていく様子を息を呑んで見守る参加者達。プレス機の横にはラベルが山積みにされていて、中国語で書かれたものも多い。担当者によると現在アジアにはプレス工場はほとんど無く、近隣諸国からの依頼も多いらしい。「メイド・イン・ジャパン」の技術力が必要とされているというわけだ。

 

 

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 この2カ所で工場見学は終わりだが、会場では「SL-1200G」の試聴会もおこなわれ、参加者が様々なレコードを試聴。なかには、ナガオカの針が歌詞に織り込まれたサザンオールスターズ「ヨシ子さん」のレコードも用意されていた。またイベント参加者全員に土岐麻子「Beautiful ay/ラブソング」のシングルがプレゼントされるなど、レコード好きにはたまらないイベントになった。

 

 

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