3社のプライド

オーディオ=音楽のエモーショナルさを伝える機械

井谷哲也

Technics CTO/チーフエンジニア

1980年の入社以来、CDプレーヤ、LDプレーヤ、DVDプレーヤ、BDプレーヤと、パナソニックのオーディオ&ヴィジュアル事業にこの人ありと言うべき開発スタッフ。

"ダイレクトドライブ・レコードプレーヤを再定義する、外見はかつてのロングセラーであるSL-1200、中身は現在でも圧倒的な支持を集める名器SP10-MK2を足掛かりに"、というスローガンをもって今回の新機種SL-1200GAEは生み出された。

助走期間も含めて1年半ほどで商品化に至った現在の心境とは。

『以前は技術重視・スペック重視でしたが、今はそれに加えて音楽のエモーショナルな部分をどう伝えるかにこだわった商品開発をしています。 ブランドを構築するのは長い年月がかかりますので、今は蓄積の時期と心得、腰を落ち着けて、愚直な商品開発とそれの地道なプロモーションで取り組んで行きたいと思っています。』


匠の継承者

手塚和巳
西谷俊介

東洋化成株式会社 カッティングエンジニア

従来、レコード盤のカッティング作業といえばマスタリングエンジニアが行うものであった。しかし、1959年、独立系プレス工場として創業し、現在では国内唯一のアナログ製造会社である東洋化成は、カッティング作業をプレス作業に紐づけるという発想転換で今日まで作業を続けている。

そのエンジニアリングの中核を成す手塚氏が、2007年、スタッフ採用時に多数の応募の中から選出したのが、電子工学など学んだことのないレコード好きの青年の西谷氏。現在では指名での依頼を多数受け持つエンジニアに成長を遂げた。

『ラウドな音を求めるお客様にはラウドに。繊細な音作りのリクエストには繊細に。マスターのもつ彩りに余計な色合いを持ちこまないのは、プレスやメッキ工程との連携による仕上がりを想定した音作りを心がけているためです。』(西谷氏)


唯一無二のクラフトマン

増川裕子

株式会社ナガオカ 山形工場製造2課

レコード針を生産し続けて70年。ダイアモンドレコード針の世界シェア80%以上をもつナガオカは、メイドインジャパンにこだわり、世界中に年間200万本供給するというチップの全てを山形の自社工場で製造している。

工場のラインの中でもひときわナガオカならではのこだわりを体現しているのが増川氏の作業。1999年の入社以来従事している交換針の組立作業は、製品の全てを手作業で1本1本仕上げているという。

『顕微鏡とピンセットを使い、ゴムダンパーに針先を装着していく工程は、1ミクロンの誤差も許されない作業なのです。そのため、機械での生産は難しく、技術の習熟には長い年月がかかるのです。私は先輩の技師から伝承されたノウハウを若手の有望なスタッフに時間をかけて伝え、自分達の手でナガオカのもつ世界トップレベルの技術と音を守っていきたいと思っております。』