鈴木慶一 × 和田博己 
「ぼくらのオーディオ・ヒストリー」

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『アナログの音って、82年にCDが出てからすごく良くなったんですよ』(和田)

 

 

ーーームーンライダーズで初めてCDでリリースしたのは『マニア・マニエラ』(82)ですが、ミックスとかで気をつけたことはありました?

 

鈴木「あれはアナログ録音したものをデジタルにしただけだからね。最初はレコードで出すつもりだったのが、発売中止になったからCDで出そうとということになったわけだ。当時は誰も、我々自身もCDプレイヤーを持ってなかったからそれでいいんじゃない?っていう(笑)。でも、デジタルのマスターを聴いた時、ぶったまげたんだよ。高音が歪まないとか、ハイハットがピシッとちゃんと出るとかさ。だからヴォーカルは小さくても聴こえてたの。小さくしようという気持ちもあったから、このままで大丈夫だと思ったんだけど、後でアナログでカッティングした時、〈あれ、小さくし過ぎたかな?〉って思ったね」

 

ーーーじゃあ、デジタルを念頭においてレコーディングしたのは次の『アマチュア・アカデミー』(84)から?

 

鈴木「そうだね。アナログとCDの境目にだったのが『DON’T TRUST OVER THIRTY』(86)でアナログとCDを両方出した。そして、我々もようやくCDプレイヤーを買うわけだ」

 

和田「アナログってどのアルバムまで作ってた?」

 

鈴木「『DON’T TRUST OVER THIRTY』まで。そこから5年間休んじゃうからね」

 

和田「それで帰って来た時には、みんなアナログプレイヤーを処分して、あるいは押し入れに押し込んでCDプレイヤーを使っていた(笑)」

 

鈴木「それ以来、ずーっとデジタル」

 

ーーーそんななか、最近アナログ人気が復活してきていますが、アナログ自体、昔と比べて音は良くなってきているのでしょうか。

 

和田「東洋化成へ行って、プレスするところを見てると、〈こうきたか!〉っていうのはあるね。それはもう、昔のアナログのカッティング・エンジニアの能力とはまったく違うもんだ。CDを通過してアナログのカッティングに臨むということだから。あと、マスターのテレコが変わっちゃってて、先行ヘッドがついてないアナログテレコばっかりになってしまった。アナログマスターからアナログレコードを切れるところってコロムビアぐらいかな? 僕、去年キングのベルウッドのアナログ盤を10枚作ったんですけど、先行ヘッドのついたテレコは失われてしまってるんで、1回96、24のハイレゾファイルを作って、それでカッティングをしたんだよね。で、そのカッティングマスターを東洋化成に送って東洋化成の方でプレスしてもらった。だから、昔とちょっと作り方が変わって来てて、間に一回デジタルが入ってる」

 

ーーーデジタルとアナログの良いところが混ざっている?

 

和田「とも言えるし、ピュアアナログのLPが作りづらくなってるとも言える。アナログの音って、82年にCDが出てからすごく良くなったんですよ。それまではアナログは競合する再生メディアがないので、あぐらをかいてたの。ところがCDが出て来て一気にアナログ人気がなくなり、アナログ陣営は負けてなるかって、そこからどんどん努力して音が良くなったんですよ。テクニクスがこのタイミングでもう一回アナログを出して来るっていうのは、それを求めてるユーザーがいっぱいいるってことなんですよね」

 

 

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